もうすぐ届く歯医者のお歳暮
歯医者さんの涙をみたこと、ありますか?
患者さんの涙は連想できるけれど…
また、京都まで行って、歯の治療です。
京都の歯医者の通い始めて、かれこれ十年になりました…
ボクたち仲間からは、「マエジュン」と呼ばれているこの歯医者は実に調子いい。
関西人独特の、笑ってごまかす会話もなかなかの腕前です。なので、何処まで本気なのか、皆目見当もつきません。する、と言ったことをしないし、しない、と言ったことをするし…。
いい加減な人に見えるのです、この歯医者…
しかし、ボクがこの歯医者の治療院に通い続けている理由は、この歯医者が好きなのです。
どこがそんなにいいのか… いい加減な人にしか見えないこの歯医者は、実は、付き合ってみると「やさしさ」がある人だからです。この一点は、神が与えた彼の人生の財産なんじゃないだろうかとさえ、帰りの新幹線の中で思ったりもします。ボクはマエジュンのような「やさしさ」が自分にはあるだろうか、と思い返すこともありました。
ボクの歯を治療しているときの彼の姿は、まさしく、医者そのものです。衛生士さんにも、叱りつけるときもあります。「痛み」をなんとしても取り除いてみせる、という意気込みが患者であるボクにひしひしと伝わってきます… 入れた歯がピタリと合わないと、何回も何回も繰り返して納得がいくまで修正を繰り返す姿は、いい加減なマエジュンではないのです。
マエジュンは、再婚です。
再婚相手もまた、再婚です。
きっと、お互いに悩んだ末の結論が、現在の結果になったのでしょう。
素敵な結果だとボクは思います。
先日のこと、また治療院に通ってみたら、丁度お昼時でした。前歯の完成、の日です。この日の約束は、彼のためにもなんとしても守ってあげたかった。時間をとって京都まで行きました。
すると、マエジュン先生はスタッフルームで衛生士さんたちと一緒になって「お弁当」を食べていたのです。そう、きっと奥さんが作ってくれたお弁当を頬張っていたのでしょう。
カッコ付けでは、京都一番の歯医者です。狭い京都でデカイベンツを乗り回し、腕時計も鞄も舶来品。治療室も現代機器をビッシリそろえて…と、いう医者が、奥さんの作ってくれた「お弁当」をみんなと一緒に食べている… しあわせ、そうです。そんな「やさしさ」をこっそりと隠しているヤツなのです。
かつて、再婚前。
マエジュンの食事は外食でした。ボクが行くと、きまって「行きつけ」の料理屋に連れて行ったものでした。でも、もうその姿は消えたようです。いいことだと、ボクは思います。
マエジュンは、ほんとは淋しかったのかもしれません… 「家族の幸せ」を掴みそこなったことを人に悟られまいとして、カッコつけの人生をしていたのかもしれない。うまくいってるさ、と背伸びをしていた自分が、ほんとは淋しかったのかもしれません。いまの奥さんと出会って、ようやく「家族の幸せ」を掴んだようです。だから、「お弁当」の味は彼にとっては、どの料亭のご馳走よりも格別なのでありましょう。
前歯が完成です!
他の歯もきれいにしてくれました。ピカピカです。
さあ、東京に戻ろうか…と、そのとき京都で小料理屋をしているマナミちゃんが来た。駅まで送ってくれるというのです。マナミちゃんとマエジュンはボクの授業で一緒だったから、顔なじみ。でも、マエジュンはその授業の話題は避けていた様子だったからボクは歯の治療のことだけしか、彼とは会話していませんでした。マナミちゃんの姿を見て…
「最近、どうしてます?」
と、珍しい質問。
「七年ぶりで、ババちゃんたちのグループが達成したんだ…」
と、ボクが言うと、なんとなんとマエジュン先生の目が熱く潤んだではありませんか。
涙が溜まっています…
「鳥肌が立ったわっ」
と、喜んだのです。
彼はまだ、みんなと過ごしたあの授業のことを忘れてはいなかったようです。
東京に帰ってきたら、カヨちゃんとトオル君夫婦からお歳暮が届いていました。毎年同じです。
大好物の「すき焼きのお肉」です! 前歯が完治したお祝いもかねて、今晩はみんなで「すき焼きパーティー」です。
「…ちょっと待てよ」
「なに?」
「そう言えば、マエジュンの奥さんからも毎年届いていたんだけどなあ…。結婚したら、ジュンコのヤツ、送ってこないのかなあ」
「本人に電話して聞いてみたら」
「んーーー、お歳暮の催促か。まあ、ボクらしいなッ」
で、箸を止めて早速マエジュンに電話です。
「ジュンコはもう京都で暮らしてますよ。東京ではないから、手配が遅れているんでしょう。すぐに送りますよぉ」
と、マエジュンは笑っています。
「そっか。そうだったね!」
もうすぐ、送ってくれるって、さッ!
ジュンコとマエジュンからの「すき焼きのお肉」が届いたら、またみんなでこうしてワイワイと出来そうです…。すき焼き鍋には具がいろいろと入っています。味も様々です。
まるで、人生のようです。
…まさみ…
患者さんの涙は連想できるけれど…
また、京都まで行って、歯の治療です。
京都の歯医者の通い始めて、かれこれ十年になりました…
ボクたち仲間からは、「マエジュン」と呼ばれているこの歯医者は実に調子いい。
関西人独特の、笑ってごまかす会話もなかなかの腕前です。なので、何処まで本気なのか、皆目見当もつきません。する、と言ったことをしないし、しない、と言ったことをするし…。
いい加減な人に見えるのです、この歯医者…
しかし、ボクがこの歯医者の治療院に通い続けている理由は、この歯医者が好きなのです。
どこがそんなにいいのか… いい加減な人にしか見えないこの歯医者は、実は、付き合ってみると「やさしさ」がある人だからです。この一点は、神が与えた彼の人生の財産なんじゃないだろうかとさえ、帰りの新幹線の中で思ったりもします。ボクはマエジュンのような「やさしさ」が自分にはあるだろうか、と思い返すこともありました。
ボクの歯を治療しているときの彼の姿は、まさしく、医者そのものです。衛生士さんにも、叱りつけるときもあります。「痛み」をなんとしても取り除いてみせる、という意気込みが患者であるボクにひしひしと伝わってきます… 入れた歯がピタリと合わないと、何回も何回も繰り返して納得がいくまで修正を繰り返す姿は、いい加減なマエジュンではないのです。
マエジュンは、再婚です。
再婚相手もまた、再婚です。
きっと、お互いに悩んだ末の結論が、現在の結果になったのでしょう。
素敵な結果だとボクは思います。
先日のこと、また治療院に通ってみたら、丁度お昼時でした。前歯の完成、の日です。この日の約束は、彼のためにもなんとしても守ってあげたかった。時間をとって京都まで行きました。
すると、マエジュン先生はスタッフルームで衛生士さんたちと一緒になって「お弁当」を食べていたのです。そう、きっと奥さんが作ってくれたお弁当を頬張っていたのでしょう。
カッコ付けでは、京都一番の歯医者です。狭い京都でデカイベンツを乗り回し、腕時計も鞄も舶来品。治療室も現代機器をビッシリそろえて…と、いう医者が、奥さんの作ってくれた「お弁当」をみんなと一緒に食べている… しあわせ、そうです。そんな「やさしさ」をこっそりと隠しているヤツなのです。
かつて、再婚前。
マエジュンの食事は外食でした。ボクが行くと、きまって「行きつけ」の料理屋に連れて行ったものでした。でも、もうその姿は消えたようです。いいことだと、ボクは思います。
マエジュンは、ほんとは淋しかったのかもしれません… 「家族の幸せ」を掴みそこなったことを人に悟られまいとして、カッコつけの人生をしていたのかもしれない。うまくいってるさ、と背伸びをしていた自分が、ほんとは淋しかったのかもしれません。いまの奥さんと出会って、ようやく「家族の幸せ」を掴んだようです。だから、「お弁当」の味は彼にとっては、どの料亭のご馳走よりも格別なのでありましょう。
前歯が完成です!
他の歯もきれいにしてくれました。ピカピカです。
さあ、東京に戻ろうか…と、そのとき京都で小料理屋をしているマナミちゃんが来た。駅まで送ってくれるというのです。マナミちゃんとマエジュンはボクの授業で一緒だったから、顔なじみ。でも、マエジュンはその授業の話題は避けていた様子だったからボクは歯の治療のことだけしか、彼とは会話していませんでした。マナミちゃんの姿を見て…
「最近、どうしてます?」
と、珍しい質問。
「七年ぶりで、ババちゃんたちのグループが達成したんだ…」
と、ボクが言うと、なんとなんとマエジュン先生の目が熱く潤んだではありませんか。
涙が溜まっています…
「鳥肌が立ったわっ」
と、喜んだのです。
彼はまだ、みんなと過ごしたあの授業のことを忘れてはいなかったようです。
東京に帰ってきたら、カヨちゃんとトオル君夫婦からお歳暮が届いていました。毎年同じです。
大好物の「すき焼きのお肉」です! 前歯が完治したお祝いもかねて、今晩はみんなで「すき焼きパーティー」です。
「…ちょっと待てよ」
「なに?」
「そう言えば、マエジュンの奥さんからも毎年届いていたんだけどなあ…。結婚したら、ジュンコのヤツ、送ってこないのかなあ」
「本人に電話して聞いてみたら」
「んーーー、お歳暮の催促か。まあ、ボクらしいなッ」
で、箸を止めて早速マエジュンに電話です。
「ジュンコはもう京都で暮らしてますよ。東京ではないから、手配が遅れているんでしょう。すぐに送りますよぉ」
と、マエジュンは笑っています。
「そっか。そうだったね!」
もうすぐ、送ってくれるって、さッ!
ジュンコとマエジュンからの「すき焼きのお肉」が届いたら、またみんなでこうしてワイワイと出来そうです…。すき焼き鍋には具がいろいろと入っています。味も様々です。
まるで、人生のようです。
…まさみ…
by masami-ny55
| 2005-12-17 16:00
| 日記