「好中球」と「腕時計」

いまもその名をとどろかす吉行先生の随筆本に「なんのせいか」という一冊がある。ボクの大学時代、女性とケンカになって会ってもらえず、混乱していた最中、江古田の古本屋さんで見つけたのが、この本。文芸学科にいるのに、吉行先生を知らなかったとは恥です、ボクって。
ま、とにかく吉行淳之介先生の著作を買い求めて、毎日読みふけってしまった。
その中に息づく男のやさしさに共感していました。…いまだにあの時期のことは、いい想い出です。

ところで、最近「好中球(こうちゅうきゅう)」ということばに出逢った…。
なんのことか…。MLBが開幕したから、その話題かな…と、思われた人もいるでしょう。まさに、絶好球以上の打者にとっては「ど真ん中の球」のことか…と。違います。

野球用語ではないのです。医学用語…でしょう、これは。
白血球には5種類あるそうですが、そのひとつがこの「好中球」。好中球の役目は、要するに「軍隊の強者たち」です。バイ菌が体内に侵入したらその「悪漢たち」と戦闘開始、一匹残らず退治するまで、戦闘をやめません。「悪」がいなくなるまで徹底的に戦い続けます。体を守る兵隊さんですから、その数は多い方がいいのです。なんだか、人海戦術の中国・水滸伝みたいな話ですが、そう思われてもいいです。ふつうの人なら、白血球全体の50%以上が平均だそうですが、ボクは昨日の検査結果で40%以上になっていました。
それを見たボクの命の恩人先生が「順調に回復していますよ」と、まあ、なんとも珍しくボクの体の快復を祝福してくれちゃったのでありますよ!
で、ボクは恥も外聞もかなぐり捨てて、質問しちゃった。
ボク「先生…」
先生「んーー?」
ボク「最近なんですけど…あのですね、…つまりとくに朝ですが、すごく元気になっちゃって…痛いくらい…で。先生、つまりそのアレしちゃっていいんですかねぇ…」
先生「あっ、それね、ドンドンやっちゃってください。体調がいい証拠ですから」
と、あっけらかんとおっしゃった。

こんな質問ができるようになったのも、医療関係のことばに関心が向くようになったことも、命の恩人のことばに感動する自分に出会えたことも、そしてボクにはこんなに沢山、ともに生きて、支えてくれる人たちがいることも、そんなことを改めて実感できたのは、明らかに「ガン」になってからである。
ちと、折れそうだったボクの心に生きる力が蘇り、学生時代にやり残したことをはじめたのも、吉行先生風にたとえれば、みんなみんな「ガンのせい」であり、「ガンのおかげ」だ。
心臓病にになった行きつけの珈琲店の親爺さんがボクに言いました。「身辺整理をしておいた方がいいよ」と。秋山ちえ子さんはその随筆「さよならを言う前に」のなかで身辺整理のことを書かれています。そうでしょうけど、ボクは身辺を整理するほど、ボクの身辺は広々としてないし…、まだまだやる気が学生時代のままだし…で。人生の大掃除をするには、まだまだ若すぎるので先にしておきます。そんなに年齢もたくさん取ってないとおもってるし…。

不思議なものです。ガンという最悪な病原菌を体内に抱えて、そのバイ菌を駆逐する「好中球」が活躍して退治してくれているけれど、ボクは「悪」に、生き方の「善」を確認させてもらえた。

「好中球」と「腕時計」_e0013640_14463134.jpgそうそう、25年ぶりでなくした腕時計が戻ってきた…。過去に出会った人から小包がとどき、その中にこの腕時計が入っていたのです。革のベルトはボロボロになっていました。長い間、誰にも使われていない様子です。
ボクがまだ経済記者だった頃、アメリカで取材していたときに、小達君という青年が「これは、父親の形見なんですが」と言っていただいたのが、この腕時計。超薄型で手巻き、中2針です。MICHEL HERBELINというメーカーなのですが、日本にはお店を出していませんでした。で、25年も行方不明だったこの時計が戻ってきたので早速調べてみたら、なんとMICHEL HERBELINはつい最近、日本に進出していました。

なので、この腕時計も「検査入院」させてあげようと思いました。
日本のMICHEL HERBELINに電話したら、「古い時計ですね、私にはわかりませんが、検査はできます」と、とても親切な応答です。行って確かめてこようと思いました…。



生きていると、いろいろ起こります。だから、人はこんな刺激にうれしくて、楽しくて、生きていようと思うんでしょぅね。
みんな、生きよう!



…まさみ…
by masami-ny55 | 2014-04-03 14:47 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


by masami-ny55

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

Translation(翻訳)

記事ランキング

以前の記事

2015年 10月
2015年 04月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 08月
more...

カテゴリ

全体
日記
我がヤンキース
自己紹介
未分類

フォロー中のブログ

空とんだ花ブタの日々
松井秀喜選手の「夢」物語

検索

画像一覧

その他のジャンル