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夏が過ぎる

ボクの夏が終わった…。

この舞台が終わると、いつものように、ひとりにもどる。
板橋の桜並木から蝉の声が間近に聞こえてくる。まだ猛暑が続く東京で、いつもの通勤途中で缶コーヒーを買ってクルマを走らせる…。なにもなかったかのように、変わらぬ姿で桜並木を走り抜ける。
この実感が、ボクに夏の終わりを告げる。

芝居の後片付けをし、遠方から来た友だちを見送り、あとはいつものようにお風呂屋さんに行く…。


ご来場頂いた方々から暖かいお言葉が届いたのでホッとしている。

今回は由起しげ子さん原作の「女中ッ子」を題材にしたことから、今までになくレトロ調に仕上がった。
昭和33年という設定でしかも、本公演では珍しく音楽は唱歌のオンパレード。
ハッキリした物語なのでお客様の反応が気になっていた。今までのようなクラシックのアリアやアニメソング、ミュージカルソングに流行歌が入り交じった舞台とは随分印象が違っていた…。10回目でがらりとモデルチェンジした、ということだが果たしてうまくいくか不安だった。

楽しさを押し出した今までとは違った台本なので、稽古場では役者さんたちから熱気を感じた。
台詞の方向性、全体の流れでの個人演技、ウケの芝居の重視など、台詞と心の一体感を要求し続けた。とくに「ハツ役」の蘭ちゃんと「女中ッ子」みーちゃんには。
その稽古ぶりが全員に伝わって、剣豪「本多源蔵」のキャラクターが生まれました。台本では、台詞の数は極端に少ない。けれど、困難な言い回しが続く。視線の方向性と身体の向きでも場面の意味が違ってしまうという微妙な役どころです。台本の台詞どおりでは、ヘタをすればただのおちゃらけシーンになりかねない。それだけはなんとしてもボクは避けなければならない。
この要望に応えてくれたのが、水野栄治さん。さすがは、JAC出身だ。要望どおりの演技をしていただけた。おかげで、ねらいどおりの剣道場シーンを創り上げることが出来た。ありがたいことです。

坊ちゃんのお兄さん・良治に扮したのは、今年日大芸術学部演劇コースを卒業したての矢部ッチ。
大学時代はみーちゃん同様、日本を代表する演出家・加藤直さんの秘蔵っ子でもあったことをボクは知っている。
その矢部ッチに「曹操の短歌行」を原文で朗読させた。このシーンはボク知る限り、おそらく我が国初の台詞まわし、だったはずです。日本人だけの舞台で、中国語の原文で「短歌行」を朗読したのは、本公演が初めてでしょう…。
本公演で中国語を始動してくださった上海から来られた尾藤埼さん。埼さんのご両親とそのお友達がわざわざ本公演の「短歌行シーン」を見に、上海から来られたのは感激でした。2回目の公演で、「短歌行」の一節ぶんを朗読したとき、観客席から大きな拍手が鳴りましたが、それは上海から来た中国のお客様からだったと、後で聞きました…。そのうえ矢部ッチは、ラストシーンの「ヘンリー5世」の4幕3場の台詞を、「この物語(女中ッ子)」に託して演技しました。まあ、おいしいところを全部独り占めにした役者ってことになります。そのせいか、あとから「矢部君が主役なの?」と聴きに来られた人がいたくらいでした…。

昨日、座長のヤマちゃんから電話がありました。「バランスがよかった」とのコメントです。ボクもそう思いました。三千代さんや蘭ちゃん、ヤマちゃんと岡田君に中西君のベテラン陣とみーちゃんを軸にした若手組・伊藤君に矢部ッチ、ソプラノの厚澤さん。このまじり加減がほどよい味に仕上げてくれたということでしょう。

三千代さんと蘭ちゃんの競演シーンは素晴らしかった…。

数々のシーンをまたひとつ、ひとつの想い出になってボクの夏が過ぎました。
また来年の夏、みんなと「手紙」で会いましょう…ねッ。
約束、約束。

感謝!
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…まさみ…
by masami-ny55 | 2012-08-26 19:28 | 日記

父性と母性

元はと言えば、音楽会的舞台から始まった「ユーガット」ですから、そのコンセプトは残っています。
ただ、10年もやっていれば音楽をつなげるだけの芝居から、物語を交えて行こうと発展するのは自然の流れだと思っています…。
カンパニーの人間関係も深まっていきますから、音楽に重点を置く初期ユーガットから、次第に物語に会わせた音楽選び、になっていきます。と言うことは、台本をしっかりさせる必要性が出てきます。

今回、由起しげ子さんの「女中ッ子」をモチーフにしている以上どうしても登場人物の個性を明確に打ち出さなければなりません。役者さんの人数も限られているので、「この役がほしい」と思っても、そのたびに役者さんを増やすわけにもいきません。限られた仲間たちで創りましたから、原作とはずいぶん印象が違った「女中ッ子」に仕上がりました。

現代。原作に登場するああいう「女中ッ子」がいるでしょうか? ハツのような「女中」がいるでしょうか?
いなくなりましたね…。文化生活が進んだ現代、マンション生活が平均的になった現代では職業としての「女中」は必要なくなったからです。ただ、「ハツの精神」は消えてしまったか、というとボクはそう思いたくないのです。母性、ですね。同時に我が子の成長を思う母親は、いつの時代でもいるはずです。

また、父性も同様です。
子供時代、そろばん塾に通ったり、書道、剣道に通った人もおられるはずです。ああした場所に通う子供たちは、確かに「その技術」を習得してはいますが、それを指導する先生は学校の先生とは違って子供たちには親近感がありました。友だち感覚…。でも先生は指導を続ける。そんな関係から子供はいつの間にか、先生に対して友だち感覚から師匠感覚が芽生え始めるものです。子供ながらに、塾の先生は一目置く存在になっていきます。それが今回の、「良治坊ちゃんと剣道指南・本多」との関係です。
本多の父性です。ここに今回はずいぶんこだわりました。

「女中・ハツと女中ッ子・直哉坊ちゃん」の母性関係は、演じる役者さんふたりの「腕」がいいので直ぐに形になりましたが、父性関係は困難でした。結構難しいですよ、父性を表現するって…。

で、です。
なんと、本番1週間前。すでにパンフの印刷が始まった…というときです。岡田君が「水野さんがなんとかスケジュールをあけてくれました」との報告です。水野さんとは、「水野栄治さん」のことです。
彼はJAC(通称・ジャック)の出身。深作監督、真田広之さんの付き人時代からミュージカルに進んだ異色の経歴。この業界では「JAC出身」ときれば「オールマイティーの役者さん」と言われています。水野さんも例外ではありません。綱渡りはするわ、空中ブランコをやるわ、スタントマンはお手の物…という演出家にとっては貴重な人材。現在はダンスのインストラクターをしています。
その水野さんが出演してくれます。夜、板橋駅のファミレスでお逢いして台本を渡しましたが、その間目を閉じてご自分の役作りをしています。そして、「んーー、大変ですよ、本多は…。親心、ですね」と一発で自分を創ってくれました。で、折角登場していただくので、見せ場も用意する必要があります。剣道指南役として、「木刀を振りまわしてください」とお頼みしたところ、「20年ぶりですが、やってみましょう」と。
昨日まで、デリケートな台詞回しと、木刀の振付をしています…。しかし、こういう人を「プロの役者さん」と言うのでしょうね。ボクはしあわせ者です。素人のボクの舞台にあがっていただけるなんて…。

おかげで、「良治」が昨日からド緊張です。良治役の矢部祥太君は今年日芸の演劇学科を卒業したばかり。周りには、山田、岡田のスーパースターのほかに、日芸の先輩・柳沢三千代、劇団AUNの女優・林蘭の役者としての大先輩がいる…、それだけでもブルッちゃうのに、加えて、水野さんとの絡み、となると気の弱い矢部ッチは冷や汗もの…。

「ラストシーンはお前と水野さんでやってみろ!」
なんて、思いっきりプレッシャーを感じるようにしておきました。
さてさて、新人君とベテランさんがほんの少し表現する父性。皆様に伝われば、さいわいですが…。

…まさみ…
by masami-ny55 | 2012-08-21 08:17 | 日記

10通目「英雄からの手紙」

十年目を迎えることが出来ました。
これほど長い期間続けられましたことは、ひとえに皆様のご愛顧の賜と深く感謝しています。
「ありがとうございます」
今回は、「英雄からの手紙」です。

私個人の文通相手がニューヨークのピアニストだったことから、岡田誠君とジョイントして原宿にある小さなホールで「You’ve got mail」と題して音楽会を創ったことが、そもそもの始まりでした…。
その翌年から、文京シビックホールで第2回から第9回まで続けました。この間、ピアニストの石野真穂さんや二期会の大スター・林美智子さんにも友情出演していただきました…。

常連の皆様にはすっかりおなじみになりましたが、この舞台の特徴は「マナ歌・マナ声」です。舞台装置は一切なくて、俗に言う「カラ舞台」です。使っている音楽はクラシックのアリアからミュージカルソング、世界民謡に唱歌、流行歌にディズニーソング、アニメソングなどあらゆる分野を使います。出来るだけ、皆様がよくご存じの曲を選んでいるのもまた、この舞台の特徴です。

簡単そうに思われるでしょうが、実はこれがくせ者。ご覧になるお客様にはなにひとつご心配をおかけいたしませんが、役者たちはヒヤヒヤものなのです。
芝居が出来る…だけではこのイタには乗れませんし、歌うだけの声楽専門家もご出演いただけないのです。ですから、毎回キャスティングに四苦八苦します。しかも、大ホールでナマ声ですから、稽古場は大きくないと稽古になりません。
このカンパニーは稽古の開始直前に、岡田君を中心にして全員が30分程度みっちりボイストレーニングを続けます。彼らには「準備運動」なのでしょう。

手紙。
これもまたこの舞台には欠かせないアイテムになりました。第3回でした。「様々な手紙たち」で登場して頂いた柳沢三千代さんの名調子で朗読する手紙たち。常連さんの中には「あの手紙が聞きたくて…」とのお言葉をいただいたときは、不覚にも胸を熱くしたものでした。
結婚間近の娘から父にあてたもの、アメリカ駐在員の手紙、東北弁で読むバッチャンの手紙、文学者の和歌を交えた手紙、アニメキャラクターの手紙など…様々な声彩で変化に富んだ異質の文体を朗読してくれます。日本を代表する声優さんには間違いないのですが、実はご本人、チャキチャキの関西人なんですよ。あれだけの「なまり」を自然に聞かせてくれるのですから…。いずれにしても、大変な勉強家です。いつだったか、文学者・山川登美子と与謝野鉄幹の文通(もちろん、筆者の創作)を台本したのですが、NHKまで足を運んで取材されておられたようでしたが…。頭が下がります。我がカンパニーの重鎮、です。

さて。
今回、ちょっとした演出上で「いたずら」をしました。
日本を代表するシェイクスピア「劇団AUN」(主幹・吉田鋼太郎)の女優・林蘭さん。すでに我がカンパニーの主軸ですが、この人の持ち味はなんと言ってもあの長台詞をきちんと聞かせる技をお持ちであることでしょう。しかも、見ているこちらは全く飽きない。前回の舞台でそれを証明しましたが、今回は、違っています…。極端までに台詞を減らしました。ということは、目の演技と体の向き、表情を「台詞」にせざるを得ないという役どころです。蘭さんは九州福岡出身。ですから、「九州の女中」役でしたら簡単ですが、これでは元気がありすぎて…やはりここは「東北の女中」役にこだわりましょう。
ご自分では「九州弁のシェイクスピア」を創作しているほど、お国ことばを大切にしている彼女。でも、今回は九州弁はいったん棚に上げていただき、「東北弁」で通します。歌も、です。
役者さんとして、この方が「燃える」はずですから、はい。

一方、「女中ッ子」に扮する福原美波さんは、今年、日本大学芸術学部演劇学科を卒業したばかり。日本でのシェイクスピア劇団の元祖ともいえる「劇団シェイクスピアシアター」(主幹・出口典雄)のオーディションに合格して、「ヴェニスの商人」でジェシカ役、「ぺルクリーズ」ではマリーナ役でデビューした久々の本格派。しかも、この舞台では「男の子役」ですから。
このおふたりをぶつけてみようと…。これは、ですよ、他ではまずあり得ないキャスティングですから、それなりにお楽しみ頂けると思います。

座長の山田展弘ですが昨年から両眼がともに見えにくくなりました。
現在、ほとんど見えません。しかし、「10周年なのでなんとしても(舞台に)あげてください。ここまで励ましていただいたお客様にも申し訳ありませんし…。やらせてください」と。ダメだ、とは言えません。
台詞は稽古場で、耳を目にしてすべて覚えてもらいました。役者魂、とは将に彼のこと。さすがは我がカンパニーの座長ですね。

山田君を一番心配していたのが、岡田誠君。この舞台のみならず、一緒にあがった舞台はたくさんあります。岡田君は宮本亜門一家の役者さんとして皆様にはお馴染みのことでしょうが、彼がその名を轟かせたのは、三谷幸喜さんの「オケピ!」でしたね。「あの歌」で一躍スターダムにのし上がりました。その岡田君ですが、恒例の「アレ」…、今年もちゃんとやります! どの場面になるのかはお楽しみに。

ボランティアの方々には、並々ならぬご援助をいただいてきました。
「ありがとうございます」
舞台で「なまはげ」が登場しますが、その衣装をふたり分創っていただきました。デザインを考えて、スケッチして、あれだけのものを完成してくれました…。
これだけの情熱が10年間、消えることなく続いているのは皆様が足を運んで下さる姿に尽きます。ボクたちの情熱の源は、ご来場下さるお客様の拍手であり、笑い声であり、声援です。
それを毎回与えてくださっていただけて、ここまで来られました。

感謝、です。

では皆様と劇場でまた、お会いしましょう…。

…まさみ…
by masami-ny55 | 2012-08-12 02:56 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


by masami-ny55

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