神保町での再会

この頃、神保町に出掛けることが多くなった。
この街は日本を代表する古本屋街。私の目的は古本をあさりに行くことではなくて、出版社の編集マンとの打ち合わせだ。この街に来ることはこれからなおさら増える。

今日、待ち合わせの時間よりもだいぶ早く街に着いた。コーヒーも飲み飽きていたから、学生時代から通っている古本屋をまわって、時間つぶしをすることにした。講談社から出版されている吉行淳之介全集20巻が3万3千円で売られている。「吉行の本は一時期に比べると、だいぶ安くなりましたね」と店員はそう言う。学生時代、吉行さんの随筆との出逢いで文学とやらに目覚めた私なので、いまでも彼の本を手にするとあの当時の自分と再会したような、そんな懐かしさと気恥ずかしさがある。

独特の臭いのする古本屋さんの狭い店内をのぞき込む。吉行さんの本がある棚の側に、なんとまあこれも懐かしい十返肇の「文学論」を見つけた。オダサクやダザイとの文壇交友話にとどまらず、友だちの多かった十返氏の「随筆/けちん坊」はいまだに私は自分の書棚に置いてある。吉行さんにしてもそうだが、友だちが多い作家を私はいまでも好みにしてしまう。
しばらく考えた。十返の本を買うか否か、と。「ケチな作家の本が、何で今になってこんなに高いのか…。ムリして買うような本でもあるまい。我慢できずにここで買ったら、十返さんに笑われる」と、止める私がいる。「まあ、そう言わずに。どうせ抱腹絶倒するんですから。楽しんだらいいですよ」と、勧める私もいた。「まあな。十返さんの本を読んで暗くなることはないし、なッ」

で、結局2冊買い求めた。「文学論」のほかに、吉行さんが編集した「十返肇著作集/よもやま話」である。学生時代から全然成長していない自分が情けない…。
ポケットに手を突っ込んだままで、いくら残っているか、多少の無念さを引きずったまま、調べてみる。この姿を、正真正銘の手探り、という…と、十返さんが昔々書いていたっけ。

「そのお金で、あそこでコーヒーでも飲んでいけば…」と、自分の声で慰められる。
行きつけの喫茶店でコーヒーを飲む。
あの若かった日のように、クスクスと嬌笑もどきの笑い声を押しつぶして、買ってきたばかりの古本をたのしんでいる。

あ~あ。またしても、だ。このふたりに、してやられた。

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…まさみ…
by masami-ny55 | 2008-06-25 16:34 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


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