日本人の忘れもの

「Production note」より

今季より来季… そんな気持ちがいつもある。
昨年は明らかに、自己満足できた舞台だった。後味がよかった。高校生たちが練習からいい味を出してくれていた。その仕上がりは、一昨年に比べたら、天地の差が出た舞台だった。

昨年から少しずつ、自分が本当にしたかった舞台作りが出来はじめている、そんな実感がある。創り出したい舞台とは、「ミュージカル風な舞台」である。

まず柱に音楽がある。音楽の持つ説得力は、国境を越えている。そして、クラシックもポピュラー、ジャズに各国の民謡、アニメソングにスクールソング…ジャンルは無数に広がっている。
10年ほど前、クラシックは古典愛好家が聴く音楽だったが、近年オペラのアリアがポピュラーシンガーが歌って人気を博したり、アイススケートに使われて広がったりしている。素敵な音楽は、ジャンルを超えている。いいことだと、ボクは思う。

多くの人たちが知っている音楽を軸にして、物語を動かす… これをしたかった。それが、回を重ねる度に次第にその方向に進み始めたのが、楽しい。

「手紙」というモチーフは物書きには大変便利。なにせ、時空を越えられる。とくに、舞台という固定した装置の中で物語を展開する場合、観客の気持ちと想像力をその場で膨らませるには、モッテコイの素材だ。明治時代になったかと思えば、未来になったり、現実の時代に戻ったり…。
ただし、それをいかに「朗読する」か、が決定的「演技」になる。その点、ボクは幸運だった。
柳沢三千代さんに出逢えたからだ。彼女は、子供の声も演じるし、東北の方言もこなし、関西弁も苦にしない。新婚女性の気持ちを手紙に託したり、上京した息子を心配する地方の母親も演じてくれた。そして、今回は彼女にとっては大冒険だったと思う。文学界では、知る人ぞ知る「山川登美子」の和歌を、登美子になりきって読んで欲しいというボクの注文だったからだ。
例の「我がいきを 芙蓉の風にたとえますな 十三弦を一いきで切る」
を、どうしても読んで欲しかった…。
この和歌は、登美子が満二十一歳で詠んだ和歌だった。
ご承知の通り、与謝野鉄幹と晶子、そして登美子との三角関係から詠んだ歌という人もいれば、単純に登美子は自分の心の奥に潜む情熱を詠った歌、と評する人もいる…。
いままでの「手紙」はすべて筆者の創作だったが、今回はこの和歌を詠む以上「実名の手紙」に仕上げなければならない。三千代さんとは、この点で度々重ねてお互いの意見交換をし、「初稿」では長々しい表現をけずったり、「登美子さんの女心としてはそういう表現はないなって思いますが…」という意見を出してくれたり、更には「本人の和歌」以外は、当時の「候文」をあえて「現代文」に書き換えるという創作にすることに決めたりして、ようやくこの「手紙」が出来上がった次第。

今回は「あこがれ」をテーマにした。
登美子の詠んだ歌をボクは自分なりに想像する…。鉄幹という才知溢れるひとりの男性を「あこがれ」のままにしておきたかったのが、登美子の人生ではなかったのかなあ、と。どうあれ、鉄幹との交流の場である「明星」は明治四十一年に百号を出版して廃刊となり、翌四十二年四月に登美子は満二十九歳の若さで突然病気になり、そのまま夭逝した。登美子を失った鉄幹がその後どうなっていったかは、皆様ご承知のとおり。白百合を愛した登美子の生涯はボクには「あこがれ」という美しさに、シミひとつつけずにそのままにしておいた、そんな女性の生き方が見えてくる…。
ついでに、ひとつ。登美子はどうやら、「ピアノは苦手」だったようだ。その苦手だった「音」に、登美子の和歌を乗せるとは、少々悪戯が過ぎたかもしれない…。

あこがれ。
ボクは思う。最近、この言葉が、こんなに美しい日本の言葉が、死語になりかけているように思われる。現実的「目標」なんて言い方だけが罷り通っていく時代に、あえて今回のファミリーコンサートでは「あこがれ」を真ん前にかざしてみた。

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…まさみ…
by masami-ny55 | 2007-08-02 04:04 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


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