岡田と自転車

仕方あるまい…
この際である、岡田について書くことにしよう…

三谷幸喜氏作「オケピ!」以来、岡田誠は押しも押させぬ「ミュージカル スター」に育ったが、私と出逢った頃はまだ彼の実力を誰も知らなかった。無名の声楽家だった…

妹さんのお名前は、確か「愛ちゃん」だったと彼から聞いているから、兄妹で「愛と誠」だ。
愛ちゃんは大学で薬学を学び、その後医師達の中で仕事続けていたが、今年、嫁いだと聞いている。
で、兄の誠となると、これが相変わらず、デカイ声を出して歌を歌っている生活である…まあ、堅実な人生を歩む愛ちゃんとは比較にならないほど、なにをしているのやら…。

そんな彼にも、特技がある。
都内だけでなく、埼玉近郊、横浜あたりまで実によく道を知っているのである。
ああ、車の運転をしているからだろう…と、思われるだろうが、そうではない。クルマはクルマでも、彼の愛車は「自転車」なのだ。
しかも、今では珍しくなったと思うが、以前新聞配達の方々が使っていたあの黒い頑丈な自転車である。重たい、のだ。この自転車でかつては、松戸のアパートから新国立劇場の初台まで平気で走り抜ける。少々の雨模様であっても、彼には「気持ちいッス」とのことである。
初台どころではない。時々、実家の熊谷までこの自転車で行く。いつだったか、母上が「重たくて移動できないから、取りに来なさい」と言われ、また、熊谷から松戸まで走って帰る…
「どこに行くんでも自転車です。気分がいいときは、歌いながら走ってますけど…ハイ」

                                         大学2年生発表会でe0013640_17313282.jpgその岡田が2ヶ月ほど前、中野に引っ越した。
やっと、都民なった。で、先日のこと。初台でコンサートの練習をしたのだが、その帰り私はクルマだったので「乗ってくか?」と尋ねた。
「いや、今日ボク自転車なんです」
そうか。好きにしなさいよ…
すると、見たこともない超モダンな自転車で岡田が私のクルマの側に寄ってきた。ハンドルがペダルをこぐと前後するのである。
銀色のアルミ製だ。見た目にも軽そうである。
「おかだぁ~、新車じゃないか! いいねぇ」
「ものすごくラクっす。早いんですよ、こいつ」
「じゃ、また明日なッ」
「ハイ、失礼します」 そう言い残して、岡田と新車は夜の環状6号線に消えていった…


岡田誠。もうじき、34歳に。
彼との出逢いは…そう、プロデューサーの福島成人が「マサミさんの塾に入りたいヤツがいて」と、言うのが始まりだった。
もう、4年前になるか。初めて見た時の印象は、正直に書くが「なんか、こ汚ねぇヤツだなあ」だった。無精髭が見苦しい。その上、汗っかきだから、話している最中タオルで顔を拭く。拭き方が強すぎるのか、顔がところどころ赤っ茶けてくる…。
「アンタ、ホントに役者なの?」
「いえ、違います。音楽家と言いますか、声楽…でして」
「はあ…歌が好きなの?」
「ええ、まあ…」

デッカイ男なのに、モジモジしてなにを言ってるのか、要領を得ない。

以前、私の友だちに「トトロ」というのがいた。私の体重の2倍はある。だから、私のクルマの助手席に乗ると、クルマは左に傾いた。
岡田はトトロほどではないにしても、私より1.7倍はあるだろう。
ある日、オナゴたちから「マサミさんって、デカイ男にモテますよね」などと、物騒なことを言われたことがあった。
言い返してやろうと思ったが、確かに思い当たるフシがあるので、笑ってごまかしたが。

私は子供の頃からそうなのだが、デカイ男って、ぬいぐるみ感覚で見ているようだ。なので、ふくらんだ横ッ腹のあたりを人差し指で突っついてみたくなる。実際に突っつくと「あッ、イタ」ってデッカイ男なのに、か細い声を上げるのが愉快でたまらない。
岡田も同じ反応だった。

                                   大学4年の打ち上げ会
e0013640_17384644.jpgデカイ男達と言えば。体育会系の男達。私は、なぜか彼らから慕われた。私より体重はあるのに、私の言うことをよく聞くのである。私はトランペットを吹いていたが、彼らはそれが出来ない。ペットの吹き方を教えてあげても、彼らはいっこうに上達しなかった。その代わりに、私は野球のスローイング、柔道の背負い投げ、剣道の飛び込みなどを彼らから習ったが、痛いから続かなかった。
「どうしてお前達って、こんな痛いことばっかりしてんだよ!」
「えっ? 痛くないよ」
「痛い!!」
日大芸術学部に進学と同時に、本部の吹奏楽研究会に。
1年生でレギュラーだったのはいいが、切符の割り当てがあった。枚数は覚えていないが、かなりの枚数だった…か。
で、他校に進学した体育会系の友だちを呼び寄せて、「おまえら、いいか。オレの晴れ舞台なんだ。気合い入れて、パーッと切符売ってこい! いいな、頼む!」
このとき「気合い入れて」が、キーワードなのである。この言葉で、彼らは反応したからだ。
結局、私の割り当ての席には、上野文化会館では珍しく学生服姿のデッカイ男達がズラズラと固まって、音楽を聴いていた。

さて、岡田だが、もうひとつの特技に、「何でも喰っちゃう」がある。
先週このアパートにきて、冷蔵庫からなにやら出してきて、くちゃくちゃ食べている…真空パックした「なると」だ。それをソーセージでも食べるかの如く、旨そうに丸ごと一本、喰うのだ。気味が悪かった。今度は自分でマグを出してきて、牛乳パックをテーブルに置いてどんどん注いで、ぐいぐい飲む。「なると」と「牛乳」の組み合わせでも平気なのである。
冷やし中華用の「なると」だが、もうどうでもいい。相手は、岡田だ。仕方ない。

                       「仰げば尊し」、小学校の恩師と卒業式でe0013640_226448.jpg
私は、ほとんど外食。そのくせ、ひとりではお店に入らない。淋しいし、わびしい。外食は大勢の友だちと一緒である。第一、仲間の注文品をシェアできるし、その方が楽しい。
そんなとき、岡田がいてくれると助かっている。というのは、私は「目が食べたい」ので、あれもこれもと品数をたくさん注文する。寿司屋に行っても、インド料理店でも和食屋に行っても、このスタイルは変わらない。
従って、いつも私の注文したものはテーブルの上で残ってしまう。それを岡田が、「では、私が失礼して」とか何とか言って、全部綺麗に喰っちゃう。岡田の食べた後は、ホントに、美しいのだ。なにも、残っていない。
味わっている感じがしないのだ。彼の食べ方は、かつて見たことがあるが体育会系の友だちの食べ方と似ている…。「とにかく喰っちゃえスタイル」なのだ。かといって、味音痴でもないようで、彼を知る仲間が「手料理は30品程度を料理しますよ」と聞く。

これだけ書けば、岡田が女性にモテる要素はどこにも見つからないはず。なのに、なぜ岡田は女性にモテるのか。
名探偵コナンでも、この謎を解明するのは、ちと、困難かも。

知ってるのは、やはり私だけのようだ…

私と話しているとき、彼の携帯電話が鳴ると私は「出なさいよ」と言う。話の途中でも、私は誰にでもそう言っている。そして、
「誰?」「母です。用事があるらしいので、明日行ってきます」
岡田は、お母さんを大事にしている。体調が優れないと聞くと、どんなに深夜でも、母上のところに向かう。忙しくても、である。
岡田に音楽家を紹介することを目的に、ニューヨークに行った。そのとき、お土産のほとんどは母上のものだった。
「このビタミン剤と栄養剤、効きますかねぇ」
そんな岡田を、私は気に入っている。人を思う心を人一倍持っている。

岡田の友だちに仲條君というのがいる。横浜でオートバイの販売をしている社長さんだ。
いつだったか、仲條君が、岡田が所属しているグループ活動を「やめたい」と、言い出した。そのとき、涙を浮かべながら切々と仲條君のグループ内での必要性を語り、彼を引き留めていたのである。
友だちを失う人生の寂しさを、仲條君にこんこんと伝えていた彼の姿が私には忘れられない。仲條君も岡田の話に意を通じたのか、男涙で聞いていた…。

岡田は人間としてやさしい、のである。
その心が、歌声にのっている。だから、観客達は彼の歌声に聞き入るんだと、私は思う。

夏祭りの岡田君ご一家(左から2番目本人)
e0013640_5531739.jpg岡田より美声のバリトンは、世界中掃いて捨てるほどいる。

しかし…
34歳の彼の人生を「歌の歌詞」に託して、岡田は歌っている。
そんな声楽家は、じつは少ない。
母への思い、父との思い出、妹の幸せ、友だちへの感謝、そしてこの世で生きる力のすばらしさを、岡田は彼の人生体験を通して、わかっているのではあるまいか…。
話し方はモジモジだか、体験は豊富に蓄積されている。その体験をヤツは、歌に託していると、私は岡田の歌を聴く度に感じるのである… 彼に、愛だ恋だの歌は似合わない。体験が少ないからだろう。それよりも、小学校で歌った唱歌や力強いアリア、明るい歌が岡田の持ち味なのである。

今年3回目を迎えた「You've got mail !」で、私はあえて岡田に、
「誰も眠てはならぬ(Nessun dorma !)」を演出してみたい。
本来、テノールの真骨頂の歌を、バリトン岡田が歌ったとしたら… 

やらせてみようではないか!

岡田誠e0013640_5552175.jpg

そして、彼が歌い終わったら、観客席から

「おかだぁ~~!」
と、みんなでかけ声を掛けようではないか! 

仲條君、よろしく!!



…まさみ…
by masami-ny55 | 2005-07-30 06:04 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


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