ピアニスト真穂

「You've got mail !」は、この8月で3回目になった。
去年は6人。そのうち、ピアニストが2人なので、実際に舞台で演技したのは4人だった。これだけでは、舞台は手不足だったので子供たちのハンドベル隊を呼んだり、急遽、舞台カメラマンに台詞を作って簡単な芝居もさせて、ボリュームを出してみた…。お客様は笑ってくれたり、クスンとしてくれたり。まあ、なんとか出来た。

それがわずか1年後…
男性5人、女性2人、ピアニスト2人にナレーション1人、そして前回ウケた例の「携帯男」の鷹取君を加えると総勢11人の大所帯!
私は彼ら一人ひとりにその人らしい舞台を用意しなければならない。それも1時間40分程度の中で、全員に均等に、である。
けっこう、難しい…

声の質が違うのでそれぞれ個性があって聴き応えはあるものの、台本を書くにあたってその時間配分とか順番をどうするかが、特に難しい。
今回は柳沢三千代のナレーションまで書き加えたので、このままもう少し台詞を押し出した書き方をすれば、ちょっとした音楽劇になりそうでだった。

実際に彼らが歌う音楽は、唱歌だったりアニメソングに流行歌、オペラのアリアにシャンソンまでと音楽分野が広い。とくに、合唱の場面は市販さている譜面を使っても良いのだが、せっかくこれだけの仲間がいるのだからと、作曲家の丸谷晴彦さんが自ら合唱譜を書き下ろしてくれた。ありがたい。持つべきものは、友だちってことか…
ポスターのデザインは、いまや売れっ子デザイナーになった永瀬祐一君だ。宮本亜門のミュージカルはじめ、パルコ劇場関係のパンフにチラシなどはもはや彼の独壇場になった。
永瀬君がわざわざ今回もチラシからパンフまでを手がけてくれた。持つべきものは、ヤッパシ「友だち」だなぁ。 感謝! 

岡田誠にしろ山田展弘にしても、安部誠司も3人は仲間内である。散々同じ舞台にのってきた。三谷幸喜氏演出の「オケピ!」で一躍スターダムに乗った岡田君はそれまで何度も宮本亜門氏のミュージカルに山田や安部両君たちと同じ舞台にのっている。私も彼らとは、まあ、付き合いが長い。
今回、新人の近藤辰俊君は山田君の紹介なので、これもまたすぐにうち解けた… じゃあ、さぁ岡田。お前がここをこうした時、山田がこう入って、アベチャンがここでこんな風に… で、台本の説明はつく。簡単な、あわせ、ですむのだが…

しかし、である。
オナゴたちが、私には難問だ。どうしたら、ご機嫌よく…してくれるのか、難問なのである。

とくに、このコンサートのピアニスト石野真穂様が私の前に立ちはだかる! 
ジャ ジャーーーン!
はっきり言って、「ウラ番」です。一応、座長さんは山田君なんだけど、ヤマチャンでも真穂の言い分には100%従います。
こう見えても私はやせても枯れても、脚本家であり演出家…の、はずなのだが、練習中、真穂に「ねぇ、ちょっとマサミく~~ん」などと呼ばれたりしたらその場駆け足。ノロノロしてるだけで「おそいなぁ~~早く来なさいよぉ」と、一喝される。連日、新国立劇場地下のレッスンルームでの音合わせは、私の「やさしさ」が試される試練の場なのだ。
「ねぇ、それは意味ないです! マサミ君さあ、ここはこうしなさいよ…どう?」
「もちろん! いいです、最高ですよ。その通りですね」
と、真穂のご意見にやさしく従うのが私の役目…です、ハイ。

伴奏中の真穂
e0013640_19255070.jpgで、先日。真穂様がキレた!
こともあろうに、その原因を作ったのは、なんと私…だった。
ピアニストをもうひとり入れることにしていたのだが、真穂には伝わっていなかったようだ。
練習が終わって、新国立劇場の1階のレストランでみんなでお食事。いつもの楽しい時間のはずなのに… 気の利かない男という観点では金メダルの岡田がこの楽しいムードをいっぺんに破壊した。

「そういえば、藤井さん。出てくれるってメールが来ましたよ。よかったですねぇ、マサミさん」
「そう! いいじゃない。藤井さんが出てくれるの? しかし、ホントかねぇ。ソリストじゃない! 美人なんだよねぇ、藤井さん。写真見てびっくりだモン!」
私は素直に感激した。

すると、
「なによ。なんの話? ピアニスト、もうひとりってなに、それ?」
真穂様のご機嫌が…ヘンなお声ですぞ。 ヤバい!
「おかだぁ~~。まさか、真穂にそのこと、言ってないのか? 言っておけよって…まさか、おまえ?」
「あっ、まだでした。スイマセン…」
全員、フォークが止まった。そして、私たちを見つめる…

「なんであたしに相談しないのよぉ。ピアノがもうひとりって、どういうこと! ちゃんと説明しなさいよ、ね」
「え~~と、さあ。真穂が2時間もひとりで演奏してると疲れると思って…もう、ひとりいたほうがいいかなって…」
「あたし、2時間なんて全然疲れません! なんで、勝手にそんなこと決めちゃうの。彼女だってかわいそうでしょ。ちゃんと伴奏って、言ったの?彼女には?」
「おかだぁ~~」
「ええ、言ってますけど…」
「伴奏って、ソリストとはちがうんだかんね。わかってんの? オカダ君!」
「………」
そしたら、調子の良さではこれまた金メダルのあの丸谷さんが、
「まずいよ、マサミ君。真穂が怒るの、オレ、わかるよ…」
「でしょ、でしょ!!!」
まったく! マルさんまで、チャッカリと真穂の味方して…

「台本、どうすんの? 彼女にもちゃんと台詞あんでしょうね」
「まだ会ってないから…イメージが…」
「ほら、みなさい。どうすんの? 知らないからね。クラシック専門のピアニストが舞台で台詞なんて考えたこともないのよ。かわいそうでしょ…」
「おかだぁ~~~~」力が抜けて、語尾はデクレッシェンド。岡田はしどろモドロ。
「えっとぉ~、藤井さんには、台詞のことは、まだ…」
「おまえねぇ…」
「オカダ君は関係ありません。マサミ君ですぅ!」

「まずいよ…」と、またしてもマルさんの調子いい声!!!

あーあ、悪いのはボク…

真穂は私のお気に入りだ。
桐朋学園大学のピアノ科を卒業後、仏国に留学。パリのシャトレ劇場のメンバーとして、伴奏者の仕事もしていた。
そんな経歴よりも、彼女の性格である。パンパンものを言うところも大好きなのだが、結局真穂は人を無視したようなことを言ったり、したりする人間に注意を言える。そんな人たちに、決して我慢しない。表現はストレートだが、そんな真穂から人としてのやさしさを感じるのだ。
音楽は社会構成と実によく類似している。人と合わせてあげよう、という精神が音楽性の始まりである。ハーモニー。協調性だ。創り出したいハーモニーにするためには、何度も失敗を積み重ねていく。辛抱強く、あきらめずに、他のメンバー達とかかわりあう…。
アンサンブルの精神である。
自分ばかり目立とうとする音楽家に大成した人は誰もいない。どんなに声がよくても、楽器に合わせたり、ともに歌う人達との協調性のない声楽家はどこにもいない。
この音楽システムは、人生とじつによく似ている、と思われてならないのだ。
連絡を取らないと、真穂は怒る。私もそうである。

真穂と出逢ったのも、いまにして思えば、必然的な巡り合わせだった。
もともと、このコンサートの企画は私がAOLのサイトでみつけた「メル友」とのE-mailの文通がきっかけだった。メル友の相手が二ューヨークの音楽留学生だ。で、岡田たちとジョイントコンサートしたらどうかと、プロデューサーの福島成人が思いついて、このコンサートが生まれたのだが、肝心の留学生が昨年演奏会直前にいなくなってしまった…。急遽、そのカバーを探しているうちに真穂と出逢えたのである。
いまでは、彼女なくしてこのコンサートは成立しない。みんなのまとめ役であり、我々のメインピアニストだ。

                                  ピアニスト藤井亜紀さん
e0013640_19514494.jpg一方、藤井亜紀さん。
東京芸大音楽学部器楽科に在学中、日本演奏連盟で新人賞受賞。卒業後、独国留学してミュンヘン国立音楽大学大学院マイスタークラス修了、マイスターディプロムを取得している。
いまでは、各交響楽団とピアノコンチェルトを共演している実力者だ。まさか、こんな素晴らしい人が私の「インチキ軍団」に参加してくれるなんて、思ってもいなかった…。

これほどの人が参加するかもしれない、と言うことを黙っていたのだから、真穂が怒るのは無理からぬ話。

「おかだぁ~~~ おめぇ~よぉ~~」

私の声は、ただ空しくレストランに消えていく…


…まさみ…
by masami-ny55 | 2005-07-26 19:46 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


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