中原美紗緒さんに再会した日

この週末、例によって浅草に。うなぎでも食べようと…。
小柳にするか、それともいつものつる屋にするか…と、新仲をぶらぶら歩いていたら、いつものマルベル堂の看板が目に入る。
浅草には散々行っているけれど、子供時分からこの写真屋さんにひとりで入ったことはない。女優さんのプロマイドを買って、定期入れに忍ばしていた男たちは確かに多くいたが、ボクはそんな趣味はない。映画を見ればいい。女優さんは銀幕の中にいるものと決めていたので、写真にして眺めると、どうも印象が違ってしまう。ボクにとっての永遠の女優・加賀まりことて彼女のブロマイドは持ち歩いたことはない。

ところが、このときに限って、ひらめいた!

はじめてひとりでマルベル堂に入ってみた。狭い。
「なかはらみさおって、おいてあります?」と、店員さんに伺った。
「女優じゃないんですが…随分昔の歌手なんですが」
「誰だろう…調べてみましょう、あるかもしれない…」
そう言って店員さんはマルベル堂の所蔵ノートを開いて調べてくれた。
「あッ、ありますねえ。この字でいいのかしら?」
芸能人の名前がびっしり書き込んであるノートには、確かに、
「中原美紗緒」と書いてある。間違いない。
「在庫は…ないかもしれない…、あっ、ここにありますねぇ」
「えっ、あるんですか!」
驚いたのは、ボクだった。
店員さんは在庫をかき分けてくれて、数カットある中原美紗緒さんの写真をガラスケースの上に並べてくれた。

e0013640_085142.jpgボクが覚えている彼女の印象とは随分違う写真だったが、まあいい。で、何枚か買い込んだ。
「この写真、マルベル堂さんのオリジナルですか?」
「ええ。ほとんどそうですね。ウチのスタジオで俳優さん達が来て撮った写真がほとんどです。たまに、相手のスタジオなどに行って撮影することもあったようですが」
そう説明してくれた。中村錦之助も大川橋蔵も、高倉健さんも、そしてひばりさんもみんなマルベル堂のスタジオで撮影したようだ。将に、日本の芸能史が飾られてある。
そう言えば、「ブロマイド」という呼び名を、商品名にしたのも確か、マルベル堂さんがはじめられたことだったと、どこかで聞いたことがあったが…。

実はボク、映画も大好きだが、音楽も好きなのですよ。いまだに。映画には音楽がつきもの。テーマ曲を聴くと映画がよみがえる。
映画には様々なジャンルがあるが、音楽にもまた様々な分野がある。シャンソンも、そのひとつ。
子供時代、そんな小難しいことはちっともわかっていなかった。ただ覚えていたのは床屋さんのラジオから流れていた「パリのお嬢さん」。あのメロディと彼女の歌声だった。真っ直ぐな歌声に、子供だったボクははじめて大人の女性の歌声を感じて、笛吹童子や紅孔雀みたいなチャンバラ世界とは明らかに別世界を感じた。
メロディもテンポも、当時の聴き馴染んだ歌とはまったく違って聞こえた。「こういう歌もあるんだ…」と、興味を抱いた。ボクの生活とはまったく違う人が歌っている、そんな歌声に聞こえて、いつまでも耳に残った…。
はじめて彼女を見たのは、お蕎麦屋さんのテレビだった。テレビからこの曲が流れていた。歌っている大人の女性をボクは見た。「この人なんだ、なかはらみさお、っていうんだ…。名前までおんなっぽくない。外人と友だちみたいだなあ、この人…」と、住む世界の違いを実感。そして、子供ながら「きれいな人だなぁ」と思った。
以後、歌手の中で、一番のお気に入りになったが、ボクは長い間こころにしまって、秘密にした。
「女優は加賀まりこ、歌手は中原美紗緒」と公然と言えるようになったのは、大学に入ってからだ。

こうしてふり返ってみると、東映チャンバラ映画専門小僧から、洋画を見るきっかけを創ってくれたのは明らかに中原美紗緒さんの「パリのお嬢さん」だった。この出逢いが益々ボクの映画好きに拍車をかけた。極端だが、やがて青年時代、アラン ドロンやジャンヌ モローの映画を追いかけたのも、その始まりは中原美紗緒さんの歌声だったなあと、といえる。
お袋にせがんで代金をもらい、渋谷から地下鉄に乗って銀座に行き、ジャクリーヌ・フランソワのレコードを買い込んできたのも、中原さんの歌声のおかげだ。そんなことも、買い込んだ彼女の写真を見ながら想い出した。お恥ずかしい話だが、ジュリエット・グレコは彼女よりもずっと後になって知った。大学の頃は、ダニエル ヴィダルが随分はやったことも想い出のひとつだ…。

シャンソンって、大ホールがお似合いのオペラのアリアと比べたら、こぢんまりとしたカフェとか、アコーデオンを持った大道芸人が舗道で鼻声混じりに歌っているような気軽な雰囲気がよく似合う歌声だと、ボクはあの頃そう感じた。
大ホールで聴くアリアもいいけれど、でも、上手に歌ってくれるシャンソンはなんだかいつまでも耳に残る…。

いまさらだが、いつか自分の舞台でシャンソンを使ってみたくなった…。
中原美紗緒…詳しく取材したことはないけれど、たしか、もともと二期会出身だったと思うが。
澄んだ歌声のわけです。


(写真は「マルベル堂」で購入)
…まさみ…
by masami-ny55 | 2011-11-07 17:17 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


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