ビトウとユジュウ

天敵:
生物間の関係で、捕食される生物に対して捕食する方の生物。アブラムシを食うテントウムシ、ハブを捕食するマングースの類。
と、辞書にはそうある。

ハブにとってはマングースが出てきたとたん、もうだめだ、ということか…。獣たちの天敵は、生命活動の存続が出会いの瞬間直に影響しているから、笑い事ですまされない。生きられるか殺されるか、なのだから。
書き出しから、ずいぶんと物騒がせな話で恐縮だが、平和な現代人にとってまさか生死のかかった出会いなんてことは、あるまい。銀座を歩いていたら、交差点の角からいきなりライオンが飛びついてきたとか、ラクダの大群が突進してきたとか…まあ、あり得ない。
夜、横浜の公園で港の灯りを二人で眺めていたら、足下からトカゲが出てきて悲鳴をあげた…程度のことは、あるだろうけれど、それでもその瞬間、天敵登場、生死がかかっているなんてことはない。

人間にとっての天敵は、目に見えないバイキンたちなのだろうが、その論議は医学研究家たちにお任せするとして、「苦手な人」を「天敵」という言い方で表現する場合がある。

あいつが来たらおしまいよ…というような、苦手意識の強い人が誰にでもひとりくらいいるものだ。そんな人がいても、不思議ではない。そこで、調査してみた。

あなたの場合「天敵」がいるか?
35人中33人が「いる」との返答だった。

では、「天敵」とのかかわりについて答えてください。
Q1 天敵がいると、どんな感情ですか?
ムカつく
食欲が減退する
つまんない/不愉快
見ただけでもアタマにくる
天敵が機嫌よく笑っているのを見ると、張り倒したくなる
脱力感/恐怖感
などの答えが返ってきた。

Q2 天敵とふたりだけになる場面は…
絶対に避ける (33人中29人)
自分がその人を天敵と悟られないように演技する (2人)
貴重品を確認する (1人)
携帯をいじる (1人)

Q3 では、天敵はあなたからそう思われていることを知っていると思うか?
知らないと思う (33人中27人)
知っていると思う (6人)

なるほど。こんな返答だった。

e0013640_0423381.jpg
かくいう私だって、天敵はいなくなることがない。むろん、現在も、である。

三,四年前もいた…確か、横浜で寝具の販売店を経営している男だったか…。
とにかく、こいつの顔を見たとたん、自然に怒りがでてくるから不思議だった。
私と顔を合わせると、この男、きまってモゾモゾし始める。一見、挙動不審者である。男のくせに、はっきりとものを言わない。
この男がいると、決めることに時間がかかりすぎた。いたずらに時間を費やしているのか、と思うほどだった。 
何人かで、ファミレスに行ったときだってそうだった。…なににするんだ、オーヤは? なんでもいいです、ボク… なんでもいいんだなぁ、じゃあカレーにしろ! あのぉ、カレーは昨日食べましたし… じゃあ、ハンバーク! 文句ないな!! 実はいまダイエット中なのでお肉は避けたいんですがぁ… じゃあ、なににするんだよ、早く決めろぉ~!!
みんなでこいつを取り囲んで、注文する品物を全員で議論しあう。こんなくだらないことにみんなを巻き込んでいる姿と、その大袈裟な態度が気にくわない! 挙げ句の果て、よく聞いてみたら、「ボク、おなか減ってない。ドリンクバーでぇ~」
…だと。

そのくせ、みんなの食事がテーブルに並ぶと「これ、どんな味なの?」とか言いつつ、あちこちのお皿の味見なんかをしっかりとやってのけるこの感覚とは…。
あ~~~ッ、もう! このぉ~。

この布団屋が私の前から消えて、しばらくは平和だった。

しかし、人生とはそうそううまくは続かない。
この布団屋がいた頃は、さほど目立ってはいなかったのだが、広島でテレビ局に勤務する女性がいる。
彼女の存在は、布団屋のあのどぎつい個性の陰に隠れていたせいで、私の目に止まることがなかった。
まさか、この女性が将来私を脅かす存在になるとは、誰が予想できただろうか…
ただ、今ふり返れば、その兆候はあったのだが、まだあの頃はその危険度には気がついていなかったのである。意識は布団屋の言動に向けられていたからである。

e0013640_0433465.jpgとにかくこの広島の女、ズレてるのだ。
先日もそうだった。私のアパートに、例の如く宿泊したいという。この女が一人で泊まるのは絶対に避けるが、みんなもいるので、まあ、いいかと…。
で、付け届けのつもりだろう、持ってきたのは「スタバのコーヒー」一袋。
みんながたくさんいるというのに、コーヒー一袋。
「コーヒーくらい、売るほどあらぁ~」
と、叫びたくなる。第一、私が大のコーヒー好きと知っているのに、なんで腐るほどまたコーヒーを持ってくるのか…。
みんながたくさんいることくらい、長いつきあいである、知らないわけがない。この女!
広島の名物「もみじまんじゅう」なんぞ、持ってきたら、その場で正座させるつもりだったが、さすがにそれは避けたようだった。
だったら、お茶菓子にするとか…とにかく、気が利かない女なのである。以前、アイスクリームを買ってきて、出したときには、トロトロにとけていたこともあった。にもかかわらず、この女ったらそれをスプーンでなめながら「おいしい」と笑うのだ。恐ろしい顔だった…。
どことなく、全体にうす汚い感じがする。
とくに、後ろ姿が醜い。会釈すると、腰の肉がはみ出しているのがよく見える。従って、下着まで…。
似合わない服装をなぜするのか… 「流行ってるんです」 
もはや、女を捨てた女と言うほかあるまい。

たったひとつ、この天敵と不覚にも…そう、あれは一生の不覚だった。

広島に出張に出たので、彼女のアパートに泊まることになった。行ってみたら、驚いた。アパートと言うよりも、マンション的高級感が漂う。なんでも、階上には広島カープの選手が家族で生活しているという。
ただし、彼女の部屋はベタベタしていて、滅多に掃除をしていない。まあ、なんとか私の寝床は確保できたのだが、一点、気になった…。
「そのDVD、なに?」
「冬ソナです…けど」
「おもしろいか、それ。流行ってるそうだけど」
「はい、もうすごいですよ、これは」
「わかった。じゃあ、見ようぜ。冬ソナ。まだ見たことないから…」
「でも…見られないんです…」
「なんでぇ」
「プレーヤーがないんです」

…ソフトだけかい? じやぁ、このDVDは飾り物かい??
おかげで、冬ソナに出会う機会を逸した。
その後、私は「冬のソナタ」を50回程度見る羽目になったのだが、彼女と見ないでよかったと思う…
あの、切ない感情をこんな天敵と分かち合いたくないからである。にもかかわらず、「トモシゲェ、見たぞ見た」などと連絡をして、ついに彼女と五年間で初めて意気投合してしまったのである…。不覚、だった。

ユジンは、友真と書く。彼女は友重と書く。だから、ユジュウと呼ぶことにした。それ以後、ユジュウと呼ぶとうれしそうな顔をして返事をするのだ。たとえ笑顔であっても、私にとっては天敵としての歴史的関係を払拭できず、うっかりとは油断はできない。
「また広島に来てください。部屋はお掃除しておきますから。冬ソナ、見ません?」
なとど、親しげの話しかけてくるようになった… 変化、である。

もうひとり、我が生涯でこれ以上の天敵は出現することはないだろう…と、いう男がいる。
そう、あのビトウ、である。
この男の特徴は、失敗すると笑うのである…。人間の反応ではない。多くは、失敗すると失望の色が顔に浮かぶものだが、この男は決してそんなことがない。
「すんません、へへへへ」
で、終わる。人にイライラを増長させる悪魔なのかもしれない…
年は四十過ぎだが、未だに出世に乗り遅れて花の係長止まりである。無理からぬ話だ。

こともあろうに、こいつと昨年、ニューヨークに行く羽目になった。
宿泊先は、タイムズスクェアにある私の定宿である。仲のいい友達と宿泊する宿なのだが、今回は特別である。で、朝。同室のビトウは張り切っている。まだ、私は起きあがる気にもなれず…
「コーヒー、買ってこいよ。レギュラーでいいから、さ。隣のスーパーで売ってる。1ドルもしないだろう」
「わかりました。レギュラーですね」
そう言って、ビトウは部屋を出た。しかし、いつまでたっても帰ってこない。二十分が過ぎたろう。
「遅くなりました」
差し出したコーヒーは、スターバックス。なんでわざわざ?
「いいのに。そんなに奮発しなくっても…そうかぁ、悪いなあ」
と、紙コップを取り上げると、軽~~い。
「ビトウ、空っぽじゃねぇか! なにしてんだ、わかんなかったのかよぉ」
「ボクもへんだなあ、とは思ったんですが…」
「あらぁ、これ、チビットだけはいってるじゃん。これ、エスプレッソだろう!」
「え? レギュラーじゃないですかぁ」
思いこみの激しさが、人の話を聞かなくしている男。ビトウ。

いつだったか、薬を買ってきてもらったのだが、間違えられて、死ぬ思いも味わった。

そのくせ、人情深い。すぐ、泣く。家族思いでもある。アッパーウエストのスーパー「ゼーバース」では親戚一同の生活用品まで買い込む男である。

このビトウとユジュウ。二人を見ていると、仲がいい。
ユジュウは関西の震災で両親を亡くしたのだが、ビトウといるとなぜか、はしゃぐ。不思議な光景、である。

e0013640_044798.jpgユジンは恋心で悩むが、ユジュウに、それはない。つまり、…そのぉ、はっきり言えば女性の魅力に乏しい。
ビトウは、昨年マンションを購入した。初めての「我が家」である。洗濯機は女性たちの意見を聞き入れて、自動乾燥機付きのものにした。風呂場や居間は、どこか私にアパートに似せている、との噂が聞こえる。
「後は、お嫁さんだけだね、ビトウちゃん」
などと、女性たちが声をかけるものだから、あの不気味極まりない声で「へへへ」と、笑う。男は仕事で燃えるが、ビトウは、それがあまり…ない。そもそも、燃えないタイプだから。「ボク、クールです」などと、ヘラヘラ笑ってる。どこがクールなものか…。ただの、勘違い男、自意識過剰男ではないか。まったく…。

天敵たちと私。

ところで、ビトウとユジュウは、私をどう思っているのだろうか。
聞かない方がいいのかもしれない…。

…まさみ…
by masami-ny55 | 2005-07-08 00:54 | 日記


東京の日常生活と、仲間たちとの交遊録


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